立退料を支払うべきケースとは？
賃貸物件の管理・運営において、賃借人に立退料を支払ってでも退去してもらうことが合理的な選択となる場合があります。以下のような状況では、立退料を支払うことで長期的な利益が得られる可能性が高いため、慎重に検討する価値があります。
1. 建物の老朽化によって修繕費の増加しているとき
築年数が経過した建物は、老朽化によって設備や構造の劣化が進み、修繕費や維持管理費が増加します。これにより、賃料収入の多くが維持費用に充てられるため、実質的な収益が減少することがあります。こうした状況では、立退料を支払って建物を取り壊し、新しい建物を建設することで、賃料の向上や維持管理コストの削減が期待できます。
2. 現状の賃料が低く、市場賃料にすることで収益が見込める場合
古い物件は設備が時代遅れとなることが多く、競争力を維持するために賃料を市場価格より低く設定せざるを得ない場合があります。賃貸物件が市場のニーズに合わなくなった場合、立退料を支払って賃借人に退去してもらい、建物をリノベーションまたは建て替えることで、賃料を引き上げるチャンスが生まれます。
3. 長期的に収益を見込める物件の場合
新しい建物やリノベーションによって、物件の価値が向上し、入居者からより高い賃料を得られる可能性があります。短期的には立退料の支払いが必要ですが、長期的には収益性の改善が見込めるため、経済的に有利な選択肢となることがあります。
4. 相続や資産整理が直近に発生する場合
老朽化した建物をそのままにしておくと、相続人にとっては「負動産」となり、維持管理や修繕が大きな負担となることがあります。このような場合、立退料を支払って建物を取り壊し、新しい建物を建てることで、相続人にとって資産価値のある「不動産」に生まれ変わらせることができます。
5. 再開発や土地の有効活用ができる場合
物件の立地条件が良い場合、建物を新しくすることで、より高い収益が期待できる可能性があります。例えば、地域の再開発計画に合わせて、物件の再開発を行うことで、土地の価値を最大限に引き出すことができます。このような状況では、立退料を支払ってでも、賃借人に退去してもらい、新しい収益源を確保する方が、経済的に合理的です。
建物の老朽化に伴う建て替えが成功した事例
依頼者は、相続した財産を他の相続人から適正価格で買い取ることになりました。
しかし、依頼者は健康上の理由で収入源がなく、相続した不動産の賃料収入に依存せざるを得ない状況でした。相続した不動産は、老朽化が進み、1階部分は荒廃して貸し出しが不可能で、2階部分も市場価格よりはるかに低い賃料で貸しているため、この不動産を取得しても経済的に厳しい状況になることが予測されました。
そこで、建て替えを行った場合のシミュレーションを実施したところ、賃借人に立退料を支払っても、建て替え後の収入が依頼者の生活を十分に支える見通しであることが明らかになりました。
この事例からわかるように、建て替えによって不動産の経済的価値が向上し、依頼者の収入が安定するとともに、老朽化した「負動産」が再び価値ある「不動産」に生まれ変わりました。
