口頭督促と書面督促の違い
まず、口頭で督促する場合も、書面で督促する場合も、法律的な効果は同じです。しかし、書面で督促することにより、賃借人に対して賃貸人が本気であることを強く伝えることができ、より大きな心理的プレッシャーを与える効果があります。このため、口頭よりも書面で督促する方が賃借人に対して効果的な場合が多いと言えます。
普通郵便と内容証明郵便の違い
内容証明郵便は、郵便局が「いつ、誰が、誰に、どのような内容の手紙を送ったか」を証明するサービスです。配達証明を付ければ、さらに「いつ相手に届いたか」を証明することも可能です。これにより、後日、督促の有無や内容について争いが生じることを防げます。これは普通郵便にはない大きなメリットです。
内容証明郵便で督促状を送る場合、書式や字数に制限があり、郵便局の印が押されるため、通常の郵便とは異なる厳粛な体裁になります。この形式自体が賃借人に強い心理的影響を与え、普通郵便で督促する場合よりも、賃貸人が本気であることがより明確に伝わります。
滞納が1か月を超えた場合には、内容証明郵便(配達記録付き)で督促状を送ることをお勧めします。
督促手続きの流れ
督促手続きとは、裁判のような審理を行わず、賃借人の意見も聞かずに、迅速かつ経済的に賃貸人に支払督促を取得させる手続きです。この手続きは請求金額に上限がなく、何度でも利用できる点が特徴です。
手続きの流れとしては、まず賃借人の住所を管轄する簡易裁判所に支払督促を申し立てます。その後、支払督促が賃借人に送付され、到達日の翌日から2週間以内に「督促異議」が出されなければ、仮執行宣言の申立てを行い、仮執行宣言付きの支払督促が賃借人に送られます。この仮執行宣言により、判決が確定する前でも強制執行が可能となります。
督促手続きのメリット・デメリット
督促手続きのメリットは、裁判所に行かずに判決と同じ効力を持つ支払督促を取得できる点です。忙しくて裁判所に行けない場合や、賃借人と顔を合わせたくない場合に便利です。
しかし、賃借人が期限内に「督促異議」を申し立てた場合、通常の訴訟手続きに移行します。この場合、督促手続きの簡便さは失われ、裁判所に何度か出向く必要が出てくることもあります。また、仮執行宣言前に「督促異議」が出された場合、支払督促は失効しますが、仮執行宣言後の場合は強制執行が可能となります。
「督促異議」の申立て理由を記載する必要がないため、賃借人がとりあえず異議を申し立てることもあり、最終的に訴訟手続きに移行するケースが多いのが実情です。