立ち退き料とは?
立ち退き料とは、賃貸人(大家)が賃借人(入居者)に対して退去を求める際に支払う補償金のことを指します。賃貸借契約は借地借家法によって賃借人の権利が強く保護されているため、正当な理由なく立ち退きを求めることはできません。
本記事では、不動産の立ち退き料相場や、交渉のポイント、賃貸人・賃借人それぞれの立場での対応策について詳しく解説します。
立ち退きには「正当事由」が必要
借地借家法第28条では、賃貸人が賃貸契約の解除を求めるには「正当事由」が必要とされています。正当事由が認められるかどうかは、以下の要素を総合的に考慮して判断されます。
- 建物の使用を必要とする事情(自己使用の必要性など)
- 賃貸借関係の経過(契約期間や更新回数など)
- 建物の現況(老朽化の程度)
- 立ち退き料の支払い提案の有無
このうち、立ち退き料の支払いは正当事由を補完する重要な要素とされます。
立ち退き料の相場は?
立ち退き料の相場はケースによって異なりますが、一般的な目安は以下のとおりです。
1. 一軒家の立ち退き料相場
- 家賃の10ヶ月分が目安。
- 例:家賃10万円の場合 → 立ち退き料100万円程度。
2. アパート・マンションの立ち退き料相場
- 家賃の6ヶ月分+引越し費用が目安。
- 家賃5〜10万円の物件では、40万〜200万円程度の立ち退き料が支払われることが多い。
3. 店舗・テナントの立ち退き料相場
- 家賃の2〜3年分が目安。
- 家賃10万円の店舗でも1,000万〜1,500万円程度が支払われることがある。
- 営業補償が必要な場合、さらに増額される可能性あり。
4. 事務所・オフィスの立ち退き料相場
- 家賃の1年分が目安。
- 家賃10万〜20万円の物件では、300万〜400万円程度が支払われるケースが多い。
立ち退き料の内訳
立ち退き料の内訳として、以下の3つの補償費用が含まれます。
1. 移転費用の補償
- 引越し費用(業者代、運送費など)
- 仲介手数料(不動産会社への支払い)
- 新居の敷金・礼金
- 家賃差額の補償(新居の家賃が上がる場合)
- 通信回線の移転費用
2. 借家権に対する補償
借家権の価値を補償する費用。賃借人が持つ「住み続ける権利」を金銭で補償するもの。
3. 営業補償(店舗・事務所の場合)
- 休業期間中の損失補填
- 固定費・人件費の補償
- 顧客損失の補償
立ち退き料が必要となるケース
以下のケースでは、立ち退き料の支払いが必要となる可能性が高いです。
- 大家都合での退去要請(自己使用・住み替え)
- マンションや店舗の建て替え
- 再開発による立ち退き
立ち退き料が不要なケース
以下のケースでは、立ち退き料を支払う必要がない場合があります。
- 賃借人側に契約違反がある場合(家賃滞納・無断転貸など)
- 定期借家契約が満了した場合
- 建物の老朽化が極端に進み、危険な場合
- 競売でオーナーが変わった場合(新所有者の正当な退去要請)
立ち退き交渉の流れ
- 立ち退きの申し入れ(賃貸契約満了の6ヶ月〜1年前に通知)
- 立ち退き条件の提示(立ち退き料や新居の候補を提案)
- 交渉(賃借人と話し合い、金額を決定)
- 合意成立・契約書作成(取り決めを文書化)
- 物件の明け渡し(立ち退き料の支払いと引き換え)
立ち退き交渉のポイント
1. 賃貸人の交渉ポイント
- 正当事由を明確に提示する
- スケジュールに余裕を持つ
- 書面で条件を提示し、証拠を残す
- 必要なら弁護士を活用する
2. 賃借人の交渉ポイント
- 正当事由の有無を確認する
- 移転費用や補償額を具体的に試算する
- 物件の必要性を主張する
- 交渉内容は書面に残す
まとめ
不動産の立ち退き料相場は物件の種類や状況によって異なります。立ち退き交渉をスムーズに進めるためには、正当事由の確認や適切な補償の提案が欠かせません。賃貸人・賃借人それぞれの立場に応じた交渉ポイントを押さえて、円満な解決を目指しましょう。
不動産の立ち退きに関する法律相談は、弁護士にご相談ください。