建物明渡し請求における同居人への対応:独立の占有者と占有補助者の違い

不動産に関するトラブルで明け渡し請求を行う際、賃貸借契約に基づく賃借人以外の同居人にも注意が必要です。特に「独立の占有者」と「占有補助者」の違いを理解することは、訴訟を進めるうえで非常に重要です。この記事では、同居人が明け渡し請求の対象になる場合や、訴訟手続きを進める際の留意点について解説します。

目次

1. 明け渡し請求における「独立の占有者」と「占有補助者」

まず、明け渡し請求訴訟において、同居人が対象となるかどうかは、その同居人が「独立の占有者」であるか、「占有補助者」であるかによって決まります。

  • 独立の占有者
    これは、賃借人とは別に、独立して建物を占有している者を指します。たとえば、賃貸借契約で賃借人が転貸をしている場合、転貸者が独立の占有者とみなされます。
  • 占有補助者
    一方で、賃借人の家族や使用人などは、法的には独立して占有していると認められないため、「占有補助者」とされます。この場合、明け渡し請求の対象とはなりません。

2. 同居人が明け渡し請求の対象となるか?

同居人が明け渡し請求の対象になるかどうかを判断するためには、その同居人が「独立の占有者」に該当するかどうかを確認する必要があります。具体的には、以下のケースが考えられます。

(1)同居人が配偶者である場合

同居人が賃借人の配偶者である場合、その同居人は「占有補助者」と見なされます。この場合、賃借人に対して明け渡し請求を行い、判決を得ることができれば、その判決をもって配偶者にも明け渡しを求めることができます。つまり、配偶者を訴訟の被告とする必要はありません。

(2)同居人が婚約者である場合

同居人が単なる婚約者である場合、賃借人の家族とは異なり、「独立の占有者」と認定される可能性があります。この場合、明け渡し請求訴訟において婚約者も被告に含める必要があります。証拠を集めて、婚約者が物件を占有していることを立証することが求められます。

(3)同居人との関係が不明な場合

賃借人との関係が不明な同居人がいる場合、まずはその同居人が「占有補助者」か「独立の占有者」かについて確認することが大切です。場合によっては、現地調査や管理会社からの協力を得て、同居人が占有しているかどうかを確認する必要があります。この調査を怠ると、後で強制執行ができないという事態を招く恐れがあります。

3. 同居人が明け渡し訴訟の被告となるべきか?

明け渡し請求訴訟においては、同居人が「独立の占有者」として認められた場合、その同居人も被告として訴訟に参加する必要があります。反対に、同居人が「占有補助者」であれば、賃借人のみを対象に訴訟を進めることが可能です。

4. 証拠収集の重要性

同居人が「独立の占有者」であるかどうかを確認するためには、証拠の収集が欠かせません。現地調査や管理会社の協力を得ることが証拠を集める手段となります。また、同居人が占有していることを示す証拠を整えることで、訴訟をスムーズに進めることができます。

5. まとめ

不動産に関する明け渡し請求を行う場合、同居人の存在やその関係性を事前に確認しておくことが極めて重要です。同居人が「独立の占有者」と認定される場合には、明け渡し請求訴訟の被告としてその同居人も含める必要があります。逆に、占有補助者と認定されれば、賃借人のみを対象として訴訟を進めることができます。

明け渡し請求に関する問題に直面した場合、専門の弁護士に相談することで、適切な対応をとることが可能です。法律のプロに任せることで、トラブルの早期解決が期待できます。

この記事を書いた人

弁護士|注力分野:不動産・相続

琉球法律事務所の弁護士。不動産部門を率いる弁護士として沖縄の建物明渡や立ち退きの事件を解決してきた実績を持つ。宅地建物取引士の資格を有しており、琉球グループの不動産会社での不動産売買も行なっている。

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