1. 建物明渡しの催告とは?
賃貸物件の賃借人が賃料を支払わない、契約が終了しても退去しない場合、貸主は建物明渡しを求めることができます。しかし、賃借人が任意に退去しない場合は、裁判所の手続きを経て強制的に明渡しを行う必要があります。
その際に重要となるのが「催告」です。催告は、強制執行を実施する前に裁判所の執行官が行う手続きであり、占有者に対して明渡しの最終通知を行うものです。催告には以下のような目的があります。
- 占有者に対し、任意退去の最後の機会を与える。
- 強制執行の具体的な期日を明示する。
- 執行官が占有状況を確認し、今後の執行手続きを円滑に進める。
催告が適切に行われることで、債権者(貸主)にとっても余計な執行費用を抑えられるメリットがあります。
2. 強制執行の流れと催告の役割
(1) 強制執行の申立て
まず、貸主(債権者)は裁判所に対して建物明渡しの強制執行を申し立てます。この段階では、すでに建物明渡しの判決または和解調書などの債務名義を取得している必要があります。
(2) 催告の実施
裁判所が強制執行を認めると、執行官と日程を調整し、明渡しの「催告日」が決定されます。この催告日は、通常、申立てから2週間以内に設定されます(民事執行規則154条の3)。
催告日には、執行官が賃貸物件に赴き、以下の手続きを行います。
- 占有状況の確認
- 強制執行の実施予定日を記載した「公示書」の貼付(民事執行法168条の2)
- 占有者に対し、退去を促す最終通知
この公示書は、賃借人に対し強制執行が行われることを正式に通知するものであり、任意に退去するよう促す重要な役割を持ちます。
(3) 断行期日の設定と実施
催告後も賃借人が任意に退去しない場合、裁判所の決定に基づき、実際の強制執行が行われます。これを「断行」といい、執行官が現地で賃借人を退去させる手続きです。
強制執行の具体的な手順
- 債務者(賃借人)が不在の場合:残置動産があれば保管場所へ搬出し、鍵を交換。
- 債務者が在宅の場合:執行官が立ち会いのもと、債務者に荷物を引き渡し退去を促す。受け取り拒否の場合は、保管場所へ移動。
- 施錠されている場合:鍵を破壊し、室内の動産を搬出。
- 抵抗する場合:警察の協力を得ながら執行官が適切に対応。
3. 強制執行後の注意点
強制執行が完了した後も、残置物の処理や費用の精算など、貸主が対応しなければならない問題が残ります。
- 残置物の処理:
- 賃借人が所有権を放棄していない場合は、一定期間保管が必要。
- 債務者へ通知し、引き取りを求める手続きが必要。
- 処分する場合は、裁判所の許可を得る必要があることも。
- 執行費用の回収:
- 執行にかかった費用は、債務者に請求可能。
- ただし、回収できない場合もあるため、事前にコストを見積もることが重要。
4. まとめ:催告を活用しスムーズな明渡しを実現
「建物明渡しの催告」は、貸主にとっても重要な手続きであり、適切に実施することで執行費用の削減やトラブルの回避につながります。強制執行を行う際には、事前に専門家である弁護士へ相談し、スムーズな手続きを進めることが大切です。
当事務所では、不動産の強制執行に関するサポートを行っております。賃貸トラブルでお悩みの方は、お気軽にご相談ください。