建物明け渡し合意書とは?作成のポイントと例文を解説

目次

建物明け渡し合意書とは?

建物明け渡し合意書とは、賃貸人と賃借人が建物の明け渡しについて合意し、その内容を文書として記録する契約書のことを指します。通常、賃貸借契約の解除や家賃滞納による立ち退きの際に使用されます。

建物明け渡し合意書を適切に作成することで、双方の権利義務が明確になり、後々のトラブルを回避することが可能になります。

建物明け渡し合意書の必要性

争いを未然に防ぐ

合意書を作成しておけば、口頭での約束だけでは後に意見の食い違いが生じるリスクを軽減できます。

法的な証拠としての役割

賃借人が約束通りに明け渡しを行わなかった場合、建物明け渡し合意書は裁判の証拠として有効に機能します。

即決和解の前提として

裁判を回避し、即決和解を利用する場合には、事前に合意書を取り交わしておくことが重要です。

建物明け渡し合意書の書き方とポイント

基本的な記載内容

合意書には、以下の内容を明記する必要があります。

  • 当事者の氏名・住所
  • 賃貸借契約の解除日
  • 明け渡しの期限
  • 原状回復義務の明記
  • 未払い賃料や違約金の支払い条件
  • 残置物の処分方法
  • 敷金の精算条件
  • 合意書の作成日と署名捺印

作成時のポイント

  • 明確な期限を記載する: いつまでに明け渡すのか、具体的な日付を記載。
  • 原状回復の範囲を明示する: どの程度の修繕が必要かを事前に決めておく。
  • 未払い賃料がある場合の取り決めをする: 支払い方法や期日を細かく設定。
  • 残置物の扱いを記載する: 置き去りにされたものの処分について明確にする。

建物明け渡し合意書の例文

建物賃貸借契約解除および明け渡し合意書

賃貸人 (以下「甲」という。)と賃借人 (以下「乙」という。) は、甲・乙間にて令和○年○月○日に締結した建物賃貸借契約(以下「原契約」という。)に関し、次のとおり合意しました。

第一条 甲と乙とは、原契約を令和○年○月○日をもって合意解除する。

第二条 乙は甲に対し、令和○年○月○日までに本件建物を原状回復し明け渡す。

第三条 乙は、本件建物の明け渡し後、残置された動産の所有権を放棄するものとし、甲はこれを自由に処分できるものとする。その場合の処分費用は乙の負担とする。

第四条 乙は、令和○年○月○日までの未払賃料○円および、明け渡しまでの賃料相当損害金を甲に支払うものとする。

第五条 甲は、乙が明け渡しを完了した後○日以内に、乙が支払った敷金のうち、未払賃料・原状回復費用・残置物処分費用を控除した残額を乙に返還する。

本合意の証として、本書2通を作成し、甲・乙が署名捺印の上、それぞれ1通を保有する。

令和○年○月○日

甲(貸主)
住所:
氏名:       (印)

乙(借主)
住所:
氏名:       (印)

建物明け渡し合意書に関する注意点

収入印紙は不要

建物明け渡し合意書には、原則として収入印紙は必要ありません。ただし、損害金などの金銭の受領を記載する場合は印紙税の対象となる可能性があります。

証拠力を高めるための工夫

  • 公証役場で公正証書化すると、法的な証拠力が強まります。
  • 弁護士に確認してもらい、契約内容の適法性を確保する。

強制執行に備えた対応

明け渡しの実行が確実でない場合は、裁判所で「即決和解」を行い、債務名義を取得しておくと、強制執行が可能になります。

まとめ

建物明け渡し合意書は、賃貸人と賃借人双方の権利義務を明確にする重要な書類です。適切な内容を記載することで、後々のトラブルを未然に防ぐことができます。

特に、

  • 明け渡しの期限
  • 原状回復の範囲
  • 未払い賃料や違約金の扱い
  • 残置物の処分方法

などを明確に記載することが重要です。

合意書の作成に不安がある場合や、明け渡し交渉が難航している場合は、弁護士に相談することをおすすめします。

この記事を書いた人

弁護士|注力分野:不動産・相続

琉球法律事務所の弁護士。不動産部門を率いる弁護士として沖縄の建物明渡や立ち退きの事件を解決してきた実績を持つ。宅地建物取引士の資格を有しており、琉球グループの不動産会社での不動産売買も行なっている。

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